診療方針と流れ


治療方針

大月歯科医院では、MTMに基づいた予防歯科の考えをすべての軸にして、患者さんのお口の治療や健康の維持管理にあたっています。

そのため「なぜ?そうなったのかという原因を細かく調べることなく、すぐに削ったり治療する」という、これまで当たり前に行われていたやり方ではなく、お口の中を精密に検査し、患者様お一人お一人のリスクを把握し、お口の中の環境を整えた上で最小限の治療をするという考え方をもとに診療を進めております。

ここからは、従来行われてきた歯科医院での診療の流れとは違う部分がありますので、戸惑われることの無いよう、MTMの各ステップの目的と内容についてご説明いたします。

もし、MTMの流れをご覧いただき、「MTMは必要ないから困っているところの治療だけで良い」とお考えの場合は、当院での診療を行うことはお互いに良い結果は得られないと思われますので従来歯科の診療方針の歯科医院の受診をお勧めいたします。

初診時の対応とお願い

当院に初めて御来院される方へ

当院の初診時の対応についてお伝えしておきたいことがございます。

応急処置と初診時の資料取り(目的:なぜ必要?)


みなさんが歯科医院を受診されるきっかけは人により様々ですが、大多数の方が何かお困りで御来院される場合がほとんどだと思われます。

一刻も早くなんとかしてもらいたい、なんとかして差し上げたい…

そのような思いが交錯するのも確かなのではありますが、当院はMTMの考え方を基本として診療の流れを組み立てております。

したがって最初に行うべき重要なことは、そうなってしまった原因は何なのか?今のお口の中の状態はどうなっているのか?を知るための資料(データ)を採取することになるのです。

一番やってはいけないことは、何も考えず、ただ今ある結果に対しての処置をいきなり開始することなのです。

これを繰り返すことで、あなたの歯は確実に年を追う毎に無くなっていきます。

私たちはそのような従来の歯科が行ってきた過ちを繰り返したくないのです。

ただし、痛みがあるとか、歯が壊れているとか…どうしても緊急を要する事態に対してはできる限りの応急的な処置は行うようにしておりますのでご安心ください。

初診時に私たちがほしい資料は以下の通りです。※のデータは望ましいですが必ずしも初日には必要としません。

治療の流れ

1. 問診票の作成


お口の現病歴や既往歴、全身の状態や診療に対する希望などを丁寧にお伺いいたしますので遠慮無くお申し付けください。

2. 口腔内の歯式


歯の治療の状態や残っている歯の数、疾病の状況を記録するために必要です。

3. パノラマX線写真


お口全体の大まかな様子や骨の中の大きな病巣のチェックを診断するために必要です。

4. 問題部位のデンタルX線写真


現時点で問題のある部分を、より詳細な診断を行うために必要です。

5. 歯周組織精密検査


精密な修復治療を行う上で歯肉の状態を整えておくことは歯周病であろうが無かろうが大切なことです。

本検査によってあなたの歯周病の罹患状況や歯周病リスクの度合い(注)が分かります。

※6. むし歯のリスク検査


一般にはだ液検査とも呼ばれており、MTMのプロセスには無くてはならないものです。

リスク検査を行わずにむし歯を削ることは,天気予報を見ずに観光旅行に行くようなものです。

(注)当院ではむし歯のリスク検査を行う患者様には無料で歯周病のリスク検査も行うようにしております。

※7. 規格口腔内写真撮影


お口に中の写真を規格化された条件で撮影いたします。

これはお口の中の記念撮影をするようなもので,最初の状態、治療が進んでいく時の状態、長期にわたるメンテナンスでの変化を観察するのにとても参考になるものです。

この撮影においても術者のスキルが大変問われるものですが、当院の歯科衛生士は基準の技術レベルをを全員合格しておりますのでご安心ください。

※8. 全顎デンタルX線写真


歯周病による歯槽骨の吸収の詳細な様子と初期の虫歯の様子やむし歯の進行など、パノラマX線写真では到底判別できないレベルの診断を行うために必要なものです。

初診時だけではなく、定期メンテナンス時においても経過観察を行うためには必須のものとなります。

<補足事項>当院におけるレントゲンの被曝線量について


時々ではありますが、極端にレントゲンを避けたいと言われる方がおられます。このことについての私の私見を述べさせていただきます。

確かにレントゲン(X線)が身体に良いのか?悪いのか?となれば良いものではないでしょう。

チェルノブイリ原発事故や東日本大震災での原発事故で出てくる放射線量の話はみなさんよくご存じだと思います。何万年も放射線が消えないのか…怖いですよね。レントゲンで利用されているX線も放射線の一種です。

ただ、放射線にも色々な種類があって、物質そのものに放射線を発生させるものがあってそこからで続ける放射線と電気的な装置を使って発生させている放射線があります。

前者が原発事故等で話題になるウランとか、核燃料から出される放射線で、これは出る量も時間もコントロール不可能です。

そして後者が我々が日々利用しているレントゲン用のX線で、これはスイッチを押した時しか発生していないし、X線の強さも必要最低限の量にコントロールできます。

ですから、よくマスコミで報道されている放射線とは別物であるということをよく理解しておいてください。

でも、放射線を被曝することには変わりないでしょ?といわれるかもしれませんね。放射線は私たちの身の回りにも自然に存在するものです。そこで、実際我々が利用しているレントゲンの被曝量とそれ以外の被曝量をわかりやすく図にしたものがあります。

この中で最も被曝量が大きいのが歯科用CTで0.1mSv、パノラマ撮影が0.03mSv、デンタル撮影が0.01mSvとなっています。ちなみに日本人が1年間の間に自然界から発生している自然放射線の被曝量が1.5mSvですから歯科用レントゲンの被曝量は自然放射線の10分1以下の被曝量となります。さらに当院で使用しているレントゲンシステムは従来のアナログ方式ではなくデジタル方式を採用しており、被曝量はさらにアナログ方式の1/5〜1/10まで少なくなります。

ちなみに胎児に影響が出る被爆量は約100mSvと言われていますが、デジタルレントゲンの被爆量はその数万分の1です。ですから、妊婦の方でも歯科のレントゲンはほぼ問題にならないと考えてよいと思います。

それでも気になる方は妊娠初期の撮影は避けて安定期に入ってからの撮影を行うようにしています。

むし歯と歯周病のリスク検査

オーラルフィジシャン型歯科医院の特徴でもあるむし歯と歯周病のリスク検査はあなたのお口の未来を予測する上でなくてはならないデータです。海外観光旅行に行く前に目的地の天気予報や気温を調べずにいきなり出かけていくのは、もはや無謀としか言い様がありません。

私たちはあなたの歯をより長く守っていく上でリスクを知らずに治療介入を行うことはとても怖いことだと考えています。

むし歯のリスク検査


むし歯のリスク検査はお口の中の虫歯菌の量、唾液の質と量、食事の習慣、セルフケアの状況などを総合的に判断してむし歯の危険度や将来の虫歯の発生確率をコンピュータを使って算出します。

歯周病のリスク検査


歯周病のリスク検査は初診時に採取した歯周組織検査の結果と全顎デンタルX線写真による歯槽骨の吸収の程度を元に専門のリスク評価ツールOHISを使用して現在の歯周病の病態とリスク度を算出します。

再評価

当院では、むし歯や歯周病等の治療介入を行う前に歯周病の初期治療を優先して行います。

歯周病のコントロールを行わずにむし歯の治療を行うことは、歯周病により、歯を支える骨の状態や歯茎が腫れていたり安定していない状態で歯を削り、型を取り、被せ物を作ることになるのですが、これは例えるなら、地盤がグラグラな土地(歯周病)の上に立っている家の壁がひび割れてきた(むし歯)ので、ひび割れを直すために補強工事を行うようなものなのです。

このように、初期治療はMTMを行う上でも非常に重要な意味を持っています。

それは、初期治療を通じて患者さん自身がセルフケアができるようになること、そして我々が歯石の除去を行っていくことで患者様が自分自身のお口の中に興味を持って頂くことで再び疾病を繰り返さないようなお口の中の環境作りをすることが最大の目的だからです。

すなわち、初期治療のステップにおいては、私たち歯科医療提供者だけが頑張るのではなく患者様自らも参加して頂くことがもっともMTMの成功につながる条件になると言うことを知って頂きたいのです。

むし歯と歯周病のリスク検査

再評価資料取り(目的)


初期治療が終了したら次のステップは再評価ステップです。

再評価とは、初期治療の結果を評価して今後の治療方針の参考にするための評価を初診時の状況と比較しながら、もう一度評価するもので、初診時の時の資料取りと同様なデータの採取を行います。

再評価説明と治療方針のカウンセリング

再評価の資料を担当歯科医師と担当衛生士が当院のデータベースで評価、検討してその結果を担当スタッフからご説明いたします。

また、治療のオプション等は患者様のお口の状態やご自身の希望によっても変わりますので、カウンセリングも行います。

お気軽にご相談ください。

治療介入

再評価の資料及び再評価説明の結果患者様のご希望の治療方針が決まりましたら、いよいよ歯科医師による治療介入のステップに移ります。

いわばこのステップは一番みなさんが今まで経験された歯科のイメージに近いと思います。

治療後の資料取り(目的)

治療介入のステップが終わってもMTMにおいてはここがゴールではありません。

むしろ長くあなたの歯を守るための過程がここから始まると言っても過言ではありません。

治療介入後のお口の状態をきちんと記録に残しておくことで、以後のメンテナンスでのお口の中の小さな変化に気づくことができるようになるのです。

治療後の資料取り(目的)

定期チェックとしての資料取り(目的)


あなたのお口を長く守っていくために必須なステップです。

治療した後メンテナンスを行わないのは、せっかく買った新車を車検もせずに乗り続けることと同じです。車が長持ちするはずもないですし、とても危険なことだと思います。

当院のメンテナンスは「洗車」ではなく「車検」です。

そのため、定期的にリスクの高い部位や事項については患者様毎にデータをチェックしながらお口の中を担当歯科衛生士が守っていけるように日々努力しています。